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コリアンコミュニティ研究発刊

このたび、本研究会のジャーナル「コリアンコミュニティ研究 Vol.1」が発刊されました。

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内容は以下のようになっております。

特集 マイノリティ空間の記憶をどう伝えるか
 宮下良子「龍王宮の空間が語るもの」
 飯田剛史「龍王宮・箱作・済州島 -水辺の祭祀-」
 高 正子「大阪済州人の祈り ーある済州島出身女性の事例からー」
 玄 善允「済州島出身在日一世の習俗の断片」

研究論文
 本岡拓哉 柴田剛 藤井幸之助 全ウンフィ
 「戦後における在日コリアンによる養豚経営と地域社会 -和歌山県新宮市を事例に-」

コミュニティレポート
 斎藤正樹「ウトロ: 強制立退きから新しいまちづくりへ」

コラム ローカル・フィールドから
 全ウンフィ「コミュニティの記憶の諸形態」
 鄭 弼溶「関東の朝鮮人集住地区 -西東京、横浜について-」
 新井信幸「在日コリアン集住地区のまちづくりを考える~戸手四丁目河川敷地区の経験から~ 」
 内海隆男「広島における新聞記事資料の収集」

博士論文・修士論文紹介
 李 度潤
「日本の都市における外国人集住地区のまちづくりとそのコミュニティに関する研究
      ―オールドカマーズ・在日コリアンを事例として―」

書評
朴 実 「近代都市の形成と在日朝鮮人 高野昭雄 著」
柴田 剛「北朝鮮へのエクソダス 「帰国事業」の影をたどる
テッサ・モーリスースズキ著 田代泰子訳」
平川隆啓 「民族関係と地域福祉の都市社会学 二階堂裕子 著」

定例研究会・フィールドワーク記録

配布ご希望の方は、こりあんコミュニティ研究会事務局までお問い合わせ下さい。
kocoken2009@gmail.com
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第1回研究大会・スタディツアーの報告(2010年6月26・27日)

 6月26日に開催されたこりあんコミュニティ研究会第1回研究大会および、翌27日に実施されたスタディツアーについてご報告いたします。
 まず大阪市立大学都市研究プラザ学友ホールで行われた第1回研究大会は、あいにくの雨模様だったにもかかわらず、会員、非会員あわせて41名の参加がありました。水内俊雄こりあんコミュニティ研究会共同代表の開会挨拶の後、ここ研会員でもある、高麗博物館館長の樋口雄一氏から基調講演をしていただきました。「在日韓国朝鮮人史と日本社会」というタイトルの講演は、樋口氏のこれまでの膨大な研究実績を踏まえた上で、戦前から戦後連続性の中で、在日韓国・朝鮮人社会がいかなる変容を遂げてきたのかを辿るものでした。また樋口氏は近年行っている川崎市在住の在日一世の女性の聞き取り調査を踏まえ、在日朝鮮人史において、人々の「生活」への注目が必要なこと、そしてその際には「女性」の役割が重要であることが述べられました。

 その後、一般報告へと進み、まずセッション1「文化」では、金美善氏(国立民族学博物館)から「在日コリアン一世女性の識字問題―日本語識字社会に非識字移民女性として生きること―」が、宋実成氏(大阪経済法科大学アジア研究所)からは「1930~40年代の在日朝鮮人商店の屋号について―飲食店・薬局など販売業・サービス業を中心に―」の報告が行われました。まず金報告では、非識字者として在日コリアン1世女性が識字社会日本で生活するうえでの阻害要因を述べた後で、識字能力獲得のための場である夜間学校の重要性が指摘されました。宋報告では、ほとんど研究例のないオールドカマーの言語景観を明示するために、1930、40年代のいくつかの朝鮮語新聞を分析材料に、屋号の表記方法についての分析結果が報告されました。宋氏報告に対してはフロアから、当時の社会状況や場所性との関係を加味して考慮することで、より深みのある研究になることが指摘されました。
 セッション2「コミュニティ」では、まず新井信幸氏(東北工業大学)から「川崎・戸手四丁目河川敷地区の経年的住環境運営」が、そして斎藤正樹氏(ウトロを守る会)から「強制立ち退きから新しいまちづくりへ―京都府宇治市伊勢田町ウトロ地区―」の報告が行われました。新井氏報告では、在日コリアンが多住していた戸手地区における住環境の変容過程を分析する中で、在日コリアンのアイデンティティが具現化されるまちづくりが実現しなかった理由が指摘されました。一方、斎藤報告では、現在まちづくりが進行しつつある宇治市ウトロ地区の歴史と現状が報告されました。両氏の報告を踏まえてフロアでは、コミュニティの持続性や周囲の地域との関係など、今後の在日コリアンコミュニティの方向性と課題をめぐり議論となりました。
 セッション3「福祉」では、安錦珠氏(広島大学・院)から「通所介護施設における在日一世高齢者をめぐる諸問題―広島市西区福島地区の通所介護施設の事例より―」が、そして趙文基氏(桃山学院大学・院)から「在日コリアン高齢者のケアの現状と課題―故郷の家の実践を中心に―」の報告が行われました。安氏は、広島市西区福島地区の通所介護施設を事例に、在日一世女性が利用する際の諸問題(日本人利用者との関係など)や、それに対する施設による多様な対応について報告されました。一方で、趙氏は関西にある在日コリアン高齢者を対象とする介護施設の実践と利用実態について報告し、利用者によるサービス格差などケアを行なう上での課題も指摘しました。両氏の報告に関する議論では、ここ研も関与する西成区在日高齢者調査の関係者から、生活保護受給者や単身高齢者の福祉および介護にまつわる課題が提示され、またフロアの参加者からはエスニックなケアを実践する介護施設職員の負担の大きさについての指摘もありました。

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 研究発表終了後、こりあんコミュニティ研究会総会が開催されました。それぞれ担当の運営委員から2009年度の活動報告、会計報告、監査報告がなされ、規約の改定および2010年度の活動・予算計画も示されました。それぞれの議案が参加者からの承認を受けたことで、総会は無事に閉会いたしました。

 その後、高原記念館で開催された懇親会では、30名以上の参加があり、普段なかなか集まれない会員間の交流もなされました。また大会会場で展示されていた、桜ノ宮龍王宮の実測調査や写真のパネルについて、制作者である黒木宏一氏(大阪市立大学都市研究プラザ)と安田拓也氏(近畿大学・学生)から説明があり、多くの参加者から評価の声があがりました。

 翌日27日のスタディツアーは約15人の参加がありました。午前中は桜ノ宮龍王宮を訪問し、現地にて塚崎昌之氏の案内がなされました。また龍王宮の周辺にある廃品回収業を見て回り、地域住民の方からもお話をうかがう機会があり、龍王宮の歴史に関する新たな事実もわかりました。午後は、JR環状線「今宮」駅から出発し、水内俊雄氏の案内で、浪速・西成区における同和地区のまちづくり実践を見て回りました。特に西成地区のまちづくり実践や住民の生活・居住状況を巡検することで、ここ研が現在調査を進めている、西成在住の在日コリアンの状況の一端を知ることができました。そして、最後に韓国民団西成支部を訪問し、60年以上にわたり西成区にお住みの在日2世の方に、ご自身が卒業された民族系の小学校のことや、西成区在住の在日コリアンの生活・労働状況について、ご自身の古いアルバムを見せてもらいながら、教えていただきました。

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第1回こりあんコミュニティ研究会研究大会(第3報)

【こりあんコミュニティ研究会第1回研究大会(第3報)】
趣旨説明
 こりあんコミュニティ研究会は、世界中のコリアンコミュニティに関する調査・研究を行い、その成果を公開すると共に国内外の研究者相互の交流と連携・協力を促進するため2009年3月11日に発足しました。今年は韓国併合100年の年でもあり、これまでの記憶を解釈しなおし、どのように後世に伝えていくかということは、喫緊の課題であることに間違いありません。私たちの研究会は発足後間もないこともあり、まだ研究や活動の実績がそれほどあるわけではありませんが、今私たちの目の前に置かれている様々な課題を真摯に受け止めながら、コリアンコミュニティのあり様について考えるための機会の場として今回の研究大会を位置づけていきたいと考えています。これまでは月1回の定例研究会や共同調査を進めてまいりましたが、今回は80名を超える会員が一堂に会する機会として、大阪市立大学を会場に研究大会を開催することになりました。本大会では、長年にわたり在日朝鮮人史研究を進めてこられた樋口雄一さんをお招きして、基調講演をしていただく予定です。また一般報告も、多くの会員の方からエントリーしていただき、今回は「文化」、「福祉」、「コミュニティ」というセッションを設けることにしました。なお翌日6月27日(日)は、スタディツアーという形で、こりあんコミュニティ研究会がこれまで共同調査を進めてきました、大阪市桜ノ宮龍王宮と西成地区を訪問いたします。会員の皆様の積極的なご参加をお待ちしております。

◆第1回研究大会(6月26日・27日)大阪市立大学高原記念館・学友ホール
6月26日・13時より(12時より受付開始)
◇会場:大阪市立大学高原記念館
    http://www.ur-plaza.osaka-cu.ac.jp/contact/index.html

◇スケジュール
13:00-13:10 開会挨拶
13:15-14:00 基調講演
・樋口雄一氏(高麗博物館)
 「在日韓国朝鮮人史と日本社会」
   
14:10-15:10 セッション1(文化)
・金美善氏(国立民族学博物館)
 「在日コリアン一世女性の識字問題
  -日本語識字社会に、非識字移民女性として生きること-」
・宋実成氏(大阪経済法科大学アジア研究所)
 「1930~40年代の在日朝鮮人商店の屋号について
  -朝鮮的なものを扱う業種を中心に-」

15:20-16:20 セッション2(コミュニティ) 
・新井信幸氏(東北工業大学)
 「川崎・戸手四丁目河川敷地区の経年的住環境運営」
・斎藤正樹氏(ウトロを守る会)
 「強制立ち退きから新しいまちづくりへ
  -京都府宇治市伊勢田町ウトロ地区-」

16:30-17:30 セッション3(福祉)
・安錦珠氏(広島大学・院)
 「通称介護施設における在日一世高齢者をめぐる諸問題
  ―広島市西区福島地区の通所介護施設の事例より―」
・趙文基氏(桃山学院大学・院)
 「在日コリアン高齢者のケアの現状と課題-故郷の家の実践を中心に-」

17:40-18:10 総会
18:30-20:30 懇親会(大阪市立大学高原記念館)

※※※
6月27日・10時30分~16時 龍王宮および西成地区をめぐるスタディツアー
10:30~ 桜ノ宮駅集合:龍王宮スタディツアー
13:30~ 今宮駅集合:西成界隈スタディツアー
 ⇒詳しいスケジュールが決まりましたらまたご連絡させていただきます。

※※※
◇大会参加費:2000円(学部生1000円)、懇親会費3000円(学部生2000円)

問合せ先
こりあんコミュニティ研究会事務局
kocoken2009@gmail.com
プロフィール

kocoken2009

Author:kocoken2009
こりあんコミュニティ研究会は、こりあんコミュニティにおける生活と文化への理解を高めつつ、当該地域コミュニティの再生のあり方について議論しながら、日本国内に限らず共同調査及び研究を行っていくグループです。
問合せ先:kocoken2009@gmail.com

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