9月18日(土)に大阪市立大学都市研究プラザ高原記念館で開催されました、第17回定例研究会について報告します。
今回は「多文化福祉に基づいたコリアンコミュニティの地域再生に関するワークショップ」とのテーマで、こりあんコミュニティ研究会のメンバーが中心になって行なってきた、和歌山調査および西成調査の中間報告と合わせて、京阪神のコリアンコミュニティで実践的に活動されている方に地域の状況及びコメントを報告いただきました。当日は、会員・非会員合わせて、30数名の参加者がありました。
開会にあたり、日本居住福祉学会会長の早川和男さん、そして西成調査を後援する財団法人ヒューマンライツ教育財団理事長の富田一幸さん、そして 大阪市立大学都市研究プラザの水内俊雄さんの方から挨拶がありました。
まず、和歌山調査については、水内俊雄さんの方から、和歌山のコリアンコミュニティの形成と変容について、地図や空中写真を使い、説明がありました。続いて、全泓奎さんの方からは、20人近くの聞き取り調査の結果や新聞記事を分析材料に、和歌山在住在日コリアンの暮らしと生活課題が報告されました。これまであまり研究事例が多くない和歌山のコリアンコミュニティの状況を浮き彫りにすると共に、就労や生活の観点からその状況を明らかにしようとする試みは、他都市の状況を明らかにする上でも有効な手段になると思われました。
続いて、西成調査報告について、主にライフヒストリー調査から分析した、川本綾さんからの報告「コリアンコミュニティの暮らしと生活課題」を踏まえ、西成区在住コリアンの高齢者のニーズ調査について、中山徹さんからは生活ニーズや福祉サービスに関して、黒木宏一さんからは居住状況について説明がありました。特に調査から浮かび上がってきた西成区のコリアンコミュニティの特徴として、「持ち家」層が多いことが指摘され、このことが 今後のまちづくりや高齢者福祉にとってどのような影響が出るのかなど議論となりました。また今後はクロス集計などを行っていく中で、より精緻な分析がなされ、また生野地区などで行われている同種の調査結果との比較も行っていく予定ということです。
以上の調査報告後、和歌山県民団の申萬勲さん、ウトロを守る会の斎藤正樹さん、東九条 CANフォーラムの金周萬さん、社団法人大阪国際理解教育研究センターの高敬一さん、そして西成の在日高齢者福祉施設で活動されている金春子さんからそれ ぞれの地域の実態と取り組みについて報告がなされました。それぞれの地区の状況を並列することで、相対的な視点が生み出され、コリアンコミュニティの共通の課題、そして地区間の違いが認識でき、それぞれの地区にとってもよい取り組みになったかとと思います。
その後、ワークショップという形で、報告者とシンポジウム参加者全員が円座となり、それぞれが発言する場を設けました。そこでは、コリアンコミュニティが直面する課題、特に世代間および周囲の地域との「つながり」をどのように構築すべきかという点に議論が及びました。和歌山や西成地区で行った多様な記憶の記録化や西成でのアンケートによる実態調査だけではなく、地域間の連携促進や情報の共有化など、本研究会が今後行なうべき課題も浮き彫りになったと思います。
なお、今回の定例研究会は、日本居住福祉学会、財団法人ヒューマンライツ教育財団、財団法人住宅綜合研究財団、大阪市立大学都市研究プラザの後援を受けて行われました。