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第30回定例研究会報告

「災害弱者の人権を考える~差別と排除をなくすために」
一般財団法人アジア・太平洋人権情報センター(ヒューライツ大阪)藤本伸樹氏
 
第30回定例研究会は、ヒューライツ大阪の藤本伸樹氏に「災害弱者の人権を考える」とのタイトルでご報告いただいた。参加者は13名だった。
 藤本氏は在日外国人の人権をどう保障していくのか、差別という実態に対し表現の自由を考えながらも法的にどう規制していくのかについて研究されており、今回の報告でも災害をめぐって在日外国人に対する差別表現をいかに規制していくのかということに重点をおいて報告された。東日本大震災にあたり「災害救助法」が適用された7県には約11万人の外国人が暮らしていたが、震災後、被災地で不安をあおるような外国人に対する根拠のないデマ情報がツイッターなどソーシャルネットワークサービスで流れた。警察庁は悪質なデマの削除をサイト管理者に「依頼した」が、削除されたのは一部であり、悪質な差別の流布が事実上放置されたとのことだった。藤本さんは日本が批准している国連「人権差別撤廃条約」第4条(c)には「国又は地方の公の当局又は機関が人種差別を助長し又は扇動することを認めないこと」と定められているにも関わらず、2000年4月の石原慎太郎東京都知事の「三国人」発言では、知事に差別する意図はなかったと不処罰かつ責任を問われなかった ことを指摘。さらに、人種差別の宣伝・扇動に対して、法律による処罰は日本国憲法で保障する集会・結社・表現の自由などを制限するという考えから、「留保」されており、日本には人種差別の宣伝・扇動を処罰する法律は 不在であることを確認した。今回の震災にあたっては在日外国人も被災者支援する主体として救援活動をおこない、ともに困難を克服しようとする取り組みがなされており、多民族・多文化共生社会への推進力となるという肯定的な萌芽がみられた 。一方、2012年7月から 新たな在留管理制度が導入されている。この新制度では「特別永住者」「中長期在留者」「非正規滞在者」に大別、適法に滞在する人の利便性 が向上する一方で、数々の届け出の義務規定と罰則が加重。これまで交付されていた外国人登録証は 8万人を超える「非正規滞在者」には、住民票も交付れなくなった。このままでは日本で生活できない存在になりかねないと憂慮した。2011年5月、国連人権理事会に退出 された「移住者の人権に関する国連特別報告者」のブスタマンテ報告においても、移住者を日本社会の構成員として認識する、社会統合などが勧告されているとのことだった。
 最後に多民族・多文化共生社会への課題として、①政府から「独立した」国内人権機関=人権救済機関の設立。②差別禁止法の法制化やヘイトクライムの規制などを含んだ外国人基本法などの制定が必要とのことで研究会は締めくくられた。
質疑応答では、この度の在留制度変更にあたっての情報提供の不十分さや、刑罰化に対して慎重であるべきではないかなど、政府だけでなくNGO側も移民政策をどう描いていくべきかなどについて様々な議論がなされた。

(文責 石川)
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第29回定例研究会報告

テーマ:「在日コリアン高齢者と日本人高齢者の比較研究から見た健康問題と生活実態
      ~健康の社会的決定要因という側面から~」

 発表者:文鐘聲(むんじょんそん) 氏(太成学院大学看護学部准教授)

 第29回定例研究会が6月14日(木)に大阪市立大学都市研究プラザ西成プラザにおいて開催された。今回は太成学院大学看護学部准教授の文鐘聲氏に、「在日コリアン高齢者と日本人高齢者の比較研究から見た健康問題と生活実態~健康の社会的決定要因という側面から~」というテーマでご発表いただいた。参加者24名。
 文氏は、民族教育を受けられ、その後大阪大学医学部保健学科および同大学院博士課程にて学ばれた。日本公衆衛生学会認定専門家(Pablic Health Specialist)である。
 健康の社会的決定要因とは、人々の健康状態を規定する経済的、社会的条件のことである。疾病の原因を遺伝や環境のみならず、「社会格差が健康を損ねる」と考えるもので、近年大きく注目されている概念とされている。講演では、社会格差と健康問題について豊富な先行研究と氏が関わっておられる日本人高齢者4500人による疫学研究、大阪市生野区での地域福祉の実践についてもお話しいただいたが、本稿では、在日コリアン高齢者の健康問題に限って要約を行うこととする。
在日コリアンを対象とした疫学の先行研究によると、一世のみならず二世にも肝がん・肝硬変死亡率が日本人に比べて2~3倍高く、それにはHBs抗原、多量飲酒が大きく係わることが報告されている。さらに、在日コリアンの生活習慣病有病者について健康を害する主な生活因子を調査した結果、仕事の身体的負担が大きい、酒の飲みすぎ、健康を気遣ってくれる人や相談できる援助的な人間関係の希薄さ、健康診断の長期未受診があげられたと報告されている。
 先行研究をふまえて2004年11月~2005年11月、大阪市生野区A地域在住の65歳以上の高齢者に対して、当該地域における在日コリアン高齢者と日本人高齢者の包括的な健康度を比較検討した。有効回答者425人(日本人221人、在日コリアン204人)を分析対象とした。
 その結果、次のことが明らかになった。①同地域に住む日本人高齢者に比べて在日コリアン高齢者は年金受給割合が低く、生活保護受給者が多く、非識字者が多い。また高血圧、心筋梗塞、糖尿病などの生活習慣病が多い。②基本的な日常生活動作(ADL)は衣服の着脱・整容を除く5項目(歩行、階段昇降、食事、排泄、入浴)において、在日コリアンが低く、主観的幸福感などのQOL(Quality of Life:生活の質)も低い。③介護保険利用率には有意差はなかった。④生きがいについて、日本人が高かったのは趣味、老人倶楽部、町内会活動、家族とのだんらん、友人・近所づきあいである。これに対し在日コリアン高齢者が高かったのは「生きがいがない」という項目のみであった。⑤抑うつに関しては、在日コリアン高齢者の方がその頻度が高い。⑥転倒の経験率については、在日コリアン高齢者の方が日本人高齢者より転倒頻度が高かった。日本人、在日コリアンともに転倒群は非転倒群に比べて、抑うつ、閉じこもり、介護保険利用率が高く、高血圧、心筋梗塞、骨折の既往が高くADL,QOLの値が低かった。
 以上の結果から次の事が考えられる。同じ地域に住んでいても在日コリアンの置かれた状況、すなわち文化的・民族的要素、朝鮮半島から日本にやってきたという環境の変化、日本での労働を含む様々な環境の苛酷さなどがあるものと考えられ、それは在日高齢者には日本人と違った民族性を配慮したサポートが必要であることを示唆している。また、マイノリティまたは移民はADLが低く抑うつが多いとされており、その要因は社会経済的要因のほかにソーシャルサポートの不足、識字問題における情報の少なさなどがあり、それを克服するために、ホスト社会によるアシストの必要性が指摘される。
 最後に、健康管理には社会的要因が絡んでいて、在日に特化した問題、あるいは日本人との共通した問題を解決するには協働が必要であり、社会資源をうまく使いながら、地域住民と保健、医療、福祉などの専門家(学際的)、及び行政が一緒になって「健康で幸せな町づくり」を目指していくべきであると結ばれた。
 講演終了後の質疑応答としては、上記研究に関する「在日コリアン」の定義について(本研究では現在の国籍に関係なく定義している)、社会資源に関するもの(アウトリーチ型がより増えれば)、申請主義・届出主義に関するもの(ソーシャルワーカーなどによる訪問や見回りにより少しでもよいものに)、階層に関するものがあり、活発な意見が交換された。

参考文献
文鐘聲(2009)在日コリアンに対するソーシャルワーク.ソーシャルワーク研究,35(3),205-212.

(文責 岩山)
プロフィール

kocoken2009

Author:kocoken2009
こりあんコミュニティ研究会は、こりあんコミュニティにおける生活と文化への理解を高めつつ、当該地域コミュニティの再生のあり方について議論しながら、日本国内に限らず共同調査及び研究を行っていくグループです。
問合せ先:kocoken2009@gmail.com

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