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第38回定例研究会報告

こりあんコミュニテイ研究会 第38回定例研究会報告     2014年5月14日
                               文責:岩山春夫(運営委員)
報告:「在日フィリピン人の高校進学」高畑幸先生(静岡県立大学)
報告:「ケアをめぐる国際移動~フィリピン人住民と介護」安里和晃先生(京都大学)
日時:2014年3月15日(土)14:00~16:00
場所:大阪市立大学都市研究プラザ・西成プラザ    参加者:10人

 まず高畑先生から、在日フィリピン人1.5世代の「来日するまで-移動プロセス-再婚家庭への適応-学校生活-高校進学-進学後の進路」について事例に基づいてご報告をして頂いた。現在在日フィリピン人は約18万人(2012年)であり、そのうち永住・定住者が90%を占める(労働10%)。これは中国、韓国に次いで第三位の在日人口である。1980年代前半に興行労働者として来日した単身女性達は家族への仕送りをしていた段階から、その後結婚・定住をする事によって、1990年代半ばより呼び寄せの子供達が増加して来た。10歳前後で来日したこの1.5世代は、すでにフィリピンでの学習言語を獲得しており、来日後は家族再統合、日本語の獲得、学力形成を行う課題に直面する。学校生活では差別やイジメを受ける事もあるが、英語力を活かしての推薦入試、外国人特別枠を利用しての高校進学をすることもできる。高校進学後の進路は①安定職を得て日本で定住・帰化②フィリピンの大学への進学③日本の大学へ、その後グローバル人材④第三の国への移住、などのケースがある。しかしフィリピン人の高校進学率は低く(漢字圏が有利)、入学しても中退し、外国人特別枠「制度」の利用も、家庭環境の安定(家族としての安定、経済事情)があってこそ可能となる。1.5世代が日本でキャリアを積んでいくには、来日当初の教育投資(日本語学習)が重要であり、また来日時からの日本でのキャリア形成の伴走者となる支援制度の形成が必要である、とまとめられた。
 次に安里先生にお話いただいた。まず国際結婚については、韓国・台湾は1990年代より急速に増加しており、特に台湾では2003年には全体の結婚数の1/3が国際結婚であった。日本は1970年代より男性の国際結婚が増加したが、なだらかに増加している。しかし韓国・台湾では保守も進歩も多文化政策を推進するが、日本は多文化への関心が低く政策も不在である。また興行ビザに関しては、2004年に8万件発給されたが、入管当局が人身売買のもとだとして、2005年以降興行ビザ審査を厳格化して、興行ビザで来日する人は激減した。日本政府はこれで解決したと考えたようだが、興行ビザで来日した人達が結婚して、いまは子供達の時代になっただけでなく、フィリピンからの家族の呼び寄せもあり、課題は拡大している。さらに国際法改正によって、非嫡出子の生後認知による国籍取得が可能になり、そこで父親を探すために母子での来日が増加した。この来日のために、日本語の学習、介護訓練、ビザ取得費用などで40万円位の借金を抱える事になる。そうして日本に来て介護施設で働くフィリピン人の東大阪での事例を紹介された。そこでは死亡時に権利要求をしないという「権利放棄証書」なるものにサインをさせられたり、月12回の夜勤手当が1,200円/日であったり、「ノーと言えない人達」に対するひどい労働契約が存在する。また強制貯蓄により逃げることもままならないだけでなく、手取り7-8万円であるのでバイトに行こうとする事にも制限がかかる状態もあるという事だった。大学での取り組みとしては、フィリピンでの移民する人達に対する渡航前研修を実施するフィリピン政府在外フィリピン人委員会の職員を日本に招いて日本を良く知ってもらうと同時に学生をフィリピンに送って相互交流をしている。日本政府がやらないことを大学でやって行くと結ばれた。
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Author:kocoken2009
こりあんコミュニティ研究会は、こりあんコミュニティにおける生活と文化への理解を高めつつ、当該地域コミュニティの再生のあり方について議論しながら、日本国内に限らず共同調査及び研究を行っていくグループです。
問合せ先:kocoken2009@gmail.com

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