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第39回定例研究会報告

ここ研 第39回定例研究会報告                 2014年6月24日
                              文責・岩山春夫(運営委員)
  テーマ:「文化プラットホームとしてのコリアタウンの方向」
  報告者:ソンミギョン氏(大阪市立大学都市研究プラザ特別研究員)
  日時:2014年5月10日(土)16:00~18:00
  場所:大阪市立大学都市研究プラザ 西成プラザ      参加者:8人

 ソンミギョン氏は、この考えは「韓国人から見たもので、実際に住んでいる人の考えとは違うかもしれない」と前置きをして話を始めた。ソンミギョン氏は東京の新大久保を見て、「せっかく東京に新大久保のような場所があるから、ここでしか味わえない何か面白いことは出来ないか?」「コリアンタウンという空間を一つのコンテンツだと思えば、いろいろな事が出来るようになるのではないか」と考えるようになった。
 エスニック・タウンは異質な人々が集まる場所である。移住者と定住者が入り混じり、ハイブリッド化して、独自な文化をつくり出す。そこが文化の境界になり観光資源にもなる。また違いを認めて共生していく。これが都市の未来像ではないか。エスニック・タウンをそのような魅力あふれる都市にする為に、戦略的なシステムが必要であり、その戦略として「文化プラットフォーム」とうい概念を提案する。このように全体の問題意識を語った。
 東京のコリアンタウンを対象にして文化プラットフォーム化するための前提として、まず新大久保の現状について語る。新大久保には1980年代よりニューカマーが定住してくる。そして新大久保は2000年日韓ワールドカップ、2002年韓流ブームと続き、2006年にはそれまで40%であった韓国系経営店舗が60~90%に上昇した。しかし韓国の食べ物や韓流グッツなどの買い物は出来るが、そのほかに楽しめる「モノ」や「コト」がない。一時期何かのブームによって、活性化された地域はそのブームが終われば、街も衰えていく。特にコリアタウンのような地域は、日韓の政治・外交に影響を受けやすい。経済的活性化は、豊かな文化的滋養分に支えられてこそ続くものである。
 現在、新大久保は韓国、日本、他の国の民族の交流の場である。エスニック・タウンは色んな人々との交流を促進し、また多様な経験が出来る都市の資源になる可能性を持つ。このようなエスニック・タウンが持つ特徴を活かすためには、文化プラットフォームが必要になる。そこで彼女は文化プラットフォームを「持続的に多様な文化を受け入れ、豊かな文化的土台を形成する場であると同時に、文化間相互交流を通じた文化の化学反応により、新しい価値観と文化を創造する場である」と定義した。
 また、 文化プラットフォームの概念は以下の機能的な属性を内包する。第一に能動的参加による「創造の場」、第二に「交流及び相互コミュニケーションの場」、第三に「多様な情報及び文化発進の場」としての機能である。
 次に文化プラットフォームの構成要素である①ハードウェア(文化施設など)、②ソフトウェア(運営システムのルールなど)③コンテンツウェア(ハードとソフトが円滑に動く為のプログラム)について話し、東京の新大久保を事例にして分析した。それによると、ハードウェアは高麗博物館、文化センター・アリランがある。ソフトウェアやコンテンツウェアは特になかったが、今年の3月にやっと民間側から「大久保ドラマ&映画祭」を始めた。
 今まで量的成長を成し遂げてきたコリアタウンは、これから内実を備えて共に生きるための質的成長を成し遂げなければならない時期に直面している。これからコリアタウンは、「韓流」を売る場所だけではなく、韓国の伝統文化や現代文化などが体験でき、また、様々な文化発信の窓口として多国籍の人達との交流の場として文化プラットフォームを目指してほい。
 最後に、今の都市開発論の戦略は創造都市論も含めて、行政と民間・コミュニテイ・地域住民との連携が脆弱で上下関係になっている。地域のイメージやアイデンティティを確立するシステムが欠けている。文化が都市の発展と未来に貢献するというシステムを確立する必要がある、と主張した。
 さらに、我々は否でも応でも都市の中で見知らぬ異邦人とともに生きて行かねばならない。その為には文化に対する開放的な態度が必要である。文化は偏見を払拭でさせ、相互理解を促進・拡大させる道具であり、交流できる通路として有用である。 文化プラットフォームは、エスニック・タウンの空間開発、新しい価値の創造など、新しい可能性を提示しているのではないか、とまとめられた。
 質疑応答では、東京が文化プラットフォームのモデルになっていくだろうか?という疑問が出された。それに対して、大久保の行政はコリアンタウンをどのようにしようかという問題意識はない。ニューカマーも儲けたらアメリカに移住する人が多い。しかしこのような難しい状況のなかでも、大久保に文化的要素を取り入れるために、頑張っている人々がいるからこれから発展の可能性はあると思うと指摘した。
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第40回定例研究会のご案内

次のとおり、第40回定例研究会を開催いたします。
前回に引き続き、こりあんコミュニティ研究会会員による研究報告となります。
会員、非会員をとわず、皆様ぜひご参加ください。

報告タイトル:
 在日コリアン高齢者の福祉アクセシビリティ
  -地域包括支援センターによる夜間中学へのアウトリーチ活動から-

報告者:木下麗子さん(関西学院大学人間福祉学部実践教育支援室)
日 時:2014年7月19日(土) 17:00~19:00
会 場:大阪市立大学都市研究プラザ西成プラザ
     大阪市西成区太子1-4-31 太子中央ビル3階
      *1階の100円ショップをはいっていただきすぐ右側のドアから3階へあがってください。
        http://www.ur-plaza.osaka-cu.ac.jp/nishinari/

概 要:
超高齢社会を迎えた日本は高齢者福祉政策として地域包括ケアシステムを打ち出した。地域包括ケアシステムは、医療や介護、福祉サービスを含めた生活支援サービスが日常生活圏域で適切に提供されるような地域での体制づくりをすすめていくものであり、市区町村には地域住民である外国人高齢者にも利用しやすいサービス提供のしくみをつくることが急務とされている。生野区では、昨年度より4つの地域包括支援センターが協働して、在日コリアン高齢者が多く集うコミュニティである夜間中学校において情報提供活動としてのアウトリーチ実践をスタートさせている。このたびの定例会では、アウトリーチ実践を契機に、地域包括支援センターと夜間中学校の職員の方々を対象にしたインタビューの調査報告をもとに、先行研究から指摘されている在日コリアン高齢者の福祉サービスへのアクセス問題について、福祉アクセシビリティ概念を視点とした阻害要因と促進要因の分析についての報告をおこなう。
 
主 催:こりあんコミュニティ研究会
後 援:大阪市立大学都市研究プラザ
資料代:会員無料 非会員500円
問い合わせ kocoken2009@gmail.com
プロフィール

kocoken2009

Author:kocoken2009
こりあんコミュニティ研究会は、こりあんコミュニティにおける生活と文化への理解を高めつつ、当該地域コミュニティの再生のあり方について議論しながら、日本国内に限らず共同調査及び研究を行っていくグループです。
問合せ先:kocoken2009@gmail.com

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