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第33回定例研究会報告

こりあんコミュニティ研究会第33回定例研究会・報告 
                                    
テーマ:「当事者性の形成―中国帰国者介護予防教室『夕陽紅(シーヤンホン)の会』の取り組みからー」
報告者:飯田奈美子氏(京都市保健福祉局中国帰国者支援相談員・京都市伏見区福祉事務所中国語通訳・きょうと外国人支援ネットワーク)
日時:2013年4月27日(土)15:30~17:30
場所:大阪市立大学都市研究プラザ「西成プラザ」       参加者:17名

本報告はICレコーダーによる記録を基に、飯田奈美子氏に修正いただいて掲載しております。
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 中国帰国者とはどういう人達で、なぜ「夕陽紅の会」の取り組みになったのかをお話しする。
 中国帰国者とは中国残留邦人とその家族のことで、中国残留邦人とは以前は残留孤児と残留婦人に分けられていた。残留婦人とは、敗戦当時13歳以上の者は自分の意思で残ったとみなすとされた人達で、帰りたくても帰れないでいた。そのうちの12人が1993年に自費で強制帰国を行い、その後この人達に対しても日本政府による支援が行われるようになった。永住帰国した人は6,695人(うち孤児2,547人)、家族を含めた総数は20,866人、呼び寄せ家族を含めると推計10万人と言われる。実数は分からない。帰国者2世3世が配偶者を中国から呼び寄せているためだんだん増えていっている。
 一世を理解するには、日中戦争、ソ連の参戦、中国の養父母に育ててもらったという一世の歴史、戦争の傷跡を理解しないと、彼らの苦しみや要望が理解できない。彼らは「日本政府に四度捨てられた」(敗戦時・日中国交断絶・国交回復時・帰国後)という思いが強い。1945年敗戦、1972年日中国交回復があり、その後帰国に際しては肉親の身元保証人が必要になった。身元が判明しない人、肉親が身元を保証しない人は帰って来られなかった。そこで支援者が日本政府に訴える運動が起こった。その結果、1980年代後半より身元が判明していなくても政府が探した第三者に保証人になってもらって、たくさんの人が帰ってこれるようになった。しかしそのころ帰国者の年齢は40歳以上になっており、そこから日本語を学ぶのは大変であり、帰国の時期が遅れたと言える。支援者には引揚者が多く、国交回復をしていない頃にも帰国させようと両国政府に働きかけた。支援者は帰国者の保証人になり住む家の準備などもした。支援者の役割は大きかった。1994年「中国残留邦人等の支援に関する法律」が成立した。これは帰国から定住までの支援である。帰国したら、定住促進センターに半年入所して、日本語学習、日本での生活の勉強をして、その後定住地域に移動して、公営住宅に住み、自立研修センターで8ヶ月間の日本語勉強と就職訓練をして日本の社会に出て行くという制度であった。1980年代半ばに帰国し1994年に制度ができたのでは実に遅く、さまざまな問題が出てきた。中国残留邦人とは移住者であり、その子供世代(1人だけ国費帰国)とその後帰国する人は自費で帰ってくる。呼び寄せ世帯のためアルバイトをするが、生活保護を受けていると収入認定されるが、その制度がよくわからずトラブルも多くあった。支援制度としては定住まで行うという意味では他の外国人に対するものより優遇されているが、生活全体に対する支援が無いということで国家賠償訴訟を全国で起こした(15地裁、約2,200人が提訴)。神戸地裁だけが勝訴したが他は全部負けた。これを機に政府は新しい支援策を打ち出した。2008年より老齢基礎年金の掛け金を国が肩代りして満額支給、それプラス支援給付制度(生保と同一のもの。老齢基礎年金は収入と認めない。)および支援相談を開始した。

 中国帰国者は世代によって分断されている。一つは制度利用にも線引きがある。国費帰国と私費帰国でも割れており、私費帰国の場合は自分で日本語を学び仕事を探さなければならなかった。もう一つは残留邦人は戦後の賠償問題、二世三世は移民問題とわかれていることである。国交回復してから、帰ってくるのに大変で、帰って来てからも大変だった。支援者は国賠訴訟や国に支援を求めていく中で、支援の方法に問題が有ったように思う。「残留邦人は日本人である。だから政府は支援せよ。」という主張を使ったため、日本人であることを前面に出すことになり、残留邦人は“日本人”でなければ認められないとなってしまった。彼らは中国で40歳位までがんばって生きてきた。仕事をし結婚もして家族も持った。しかし中国で頑張って生きてきた彼らの人生が認められない、誇りをもてないものになった。帰国者問題がアイデンティティの問題になってしまった。二世は10代~20代に日本に来たので中国語も日本語も理解できる。三世、四世は小さいときに中国で過ごしたかあるいは日本で生まれた人達で日本語しか話せない。これをアイデンティティで1つにまとめるのは難しいと感じた。一世は訴訟団でまとめられるが二世三世はそこには入れない。支援はするが一線が有る。二世三世は移民として日本に来ている。一世で最初の頃に帰ってきた人達は、日本での生活体験もあった人達で日本語もできて自ら帰国したいと思って帰ってきた。その後帰国政策ができてきて、日本での生活体験もなく、二世に日本へ行きたいと言われて帰国する事にした人達が、移民として大量に帰ってきた。帰国者問題はまったく移民の問題であったものが、「日本人支援」になる事により移民の側面が強く出てこなかった。二世三世は日本に根付いて生活していかなければならない。大変忙しくしていて子供の面倒を見る事も出来ず、三世四世の教育・就労の問題が出てきた。またマスコミの中国へのマイナスイメージにより、中国にルーツを持つ事に対して誇りをもてない子供達もでてきた。そのため中国帰国者にはまとまって、助け合ったり、何かをつくりあげて行くコミュニティが形成されていなかった(集住地区はあるが)。
コミュニティを形成するにはどうしたら良いか、を考えてみることにした。そこにはニーズを持った当事者達がいる。その人達のニーズを充実させるために支援する、という風に発想を転換した。一世のニーズからはじめ、そのニーズを介護に設定した。

 「夕陽紅(シーヤンホン)の会」は京都市伏見区にあるが、ここでの一世の人達の状況についてお話しする。平均年齢は70歳を超えている。単身世帯が4割。支援制度(生保と同じ)で子供達との同居ができない。それだけではなく世代間のギャップがあり、生活習慣が異なってしまい一緒に暮らしてもうまくいかない状況もある。二世三世達は日本に適合しようと働いていて、週末に親元に来る。一世はこれでは満足できない。中国ではもっと近くにいていつでも会えた、中国と同じような生活習慣を望んでいる。介護利用についても、ヘルパーの言葉が解らない、配食サービスも食材の多種類多量の習慣や皆で食べるという習慣に合わない等の問題がある事が5~6年前より出てきていた。そこで在日コリアン高齢者介護を行っているエルファが同じような経験をしてきたことをしり、アドバイスをしてもらったまずヘルパーの育成が必要と考え帰国者三世四世を対象に育成した。ヘルパー派遣ができるのは要介護認定を受けた人達だが、認定を受けていない人達にはどうするのかを考えていた頃、京都市伏見区の小栗栖団地(帰国者が多数居住している)を対象にした生活調査が行われる事になった。中国語が出来ないと調査できないので、二世三世に調査に入ってもらった。彼らはこの調査活動を通じて、自分達の親の問題が他の家庭にもある事に気づいた。そして自分達も何かしなければと考えるようになり、これが「夕陽紅の会」の結成に向かうきっかけとなった。1年位話し合いをして介護予防教室をすることになった。
 介護予防教室について詳しくはブログを見てほしい。(「夕陽紅(シーヤンホン)の会活動報告」)。介護予防教室は中国語でやっている。ダンス(健康芸術団)、寸劇(孤児が養父母に育てられる話)、運動、気功体操などを、ヘルパー資格をとった二世三世を中心にして運営している。学生ボランティアも参加している。個人レク(トランプ、中国将棋)、集団レクを行たり、地域交流を積極的に行っている。
介護教室をやる事によって、一世の人達の介護や医療の情報や健康管理ができるようになり、また居場所づくりにもなっている。介護ヘルパーを育成して、帰国者以外の家庭にも行く事になり、地域の橋渡しの役も担う事になった。帰国者の事を地域の人に理解してもらう為の交流もしている。

 テーマは「当事者性の形成」であるが、当事者性を「帰国者」として括るのではなく、帰国者が抱えている課題を共有する事におくと、一世二世三世や地域の人達も参加しやすくなる。当事者性を引き受けると言うのは大変なことであって、二世三世には押し付けになってしまう。しかし課題を共有して一緒にやって行こうとすると、帰国者以外の人達にも参加していただけるようになった。
 最初は長くかかったが「夕陽紅の会」ができてからは短期間で成果が出てきた。   文責・岩山

*夕陽紅(シーヤンホン)の会 http://xiyanghong.blog.fc2.com/blog-entry-1.html
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こりあんコミュニティ研究会は、こりあんコミュニティにおける生活と文化への理解を高めつつ、当該地域コミュニティの再生のあり方について議論しながら、日本国内に限らず共同調査及び研究を行っていくグループです。
問合せ先:kocoken2009@gmail.com

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