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第34回定例研究会報告

こりあんコミュニティ研究会第34回定例研究会・報告
                                    
テーマ:外国人ヘルパーによる訪問介護の現状と今後の課題~外国人を雇用する事業所への聞きとり調査から~
報告者:中井久子氏(大阪人間科学大学人間科学部医療福祉学科教授)
日時:2013年6月27日(木)19:00~21:00
場所:大阪人間科学大学庄屋学舎              参加者:15名

 今回は中井久子氏(大阪人間科学大学)に「外国人ヘルパーによる訪問介護の現状と今後の課題~外国人を雇用する事業所への聞きとり調査から~」というテーマでご報告いただいた。テーマの研究目的は、在宅福祉の介護人材として、外国人の雇用の展望と課題の考察である。研究方法は、「2008年在日フィリピン人介護者調査」の回答者のうち訪問介護に従事している人の追跡調査(2011年2月~6月)と、外国人を雇用している訪問介護事業所への聞きとり調査(20011年2月~12月)を中心とする、というものである。
 まず、2008年調査に基いて在日フィリピン人介護者の概要が語られた。調査対象者190名(回答者)の平均像は「就労のため来日後、日本で結婚して定住・永住した在日歴10年以上になる30~40代の女性」でホームヘルパー2級以上取得した人達である。就労先は60%が老人ホームで、訪問介護はわずか4%弱であった。仕事内容は話し相手、入浴介助・食事介助・排泄介助(三大介護)である。雇用形態は非正規74%正規26%で、月の手取りは正規が15万円以下、非正規は10-13万円以下であり、85%の人が本国へ送金している。また経済的動機より「やりがい」や「評価」を求めて介護職に参入している。一方、介護職をやめた理由は、収入が少ない、体力的問題、職場の人間関係があげられている。外国人に対する差別があると感じている人は40%いるが、介護の仕事が「人に感謝される仕事」「在日フィリピン人のイメージが向上する」と80%の人が感じているということが報告された。
 次に外国人介護者と外国人介護者を雇用する訪問介護事業所に対する、2008年調査と2011年追跡調査について報告された。これは在日フィリピン人訪問介護者7名(2008年当時)のうち4名に対する3年後(2011年)の追跡調査である。それによると、訪問介護の仕事を継続していたのは4名中1名のみで後は介護施設で働いていた。やめた理由は利用者宅での仕事の困難ではなく、本人の転居や体調、職場の配置転換などである。4人とも訪問介護の仕事に愛着を感じており、在宅は施設に比べて日本人介護者の目を気にしないで仕事ができるので外国人にあっていると感じている。仕事上の困難としては、日本食の調理と記録の記入があるが、工夫次第で対応は可能だと考えている。また利用者の反応としては、予め利用者に事業者が了解をとることで利用者との関係は良好に維持されている。総じて、「外国人に訪問介護業務が無理だという決定的な要因はない」と報告された。一方、外国人介護者を雇用する訪問介護事業所に対する聞きとり調査(2011年)は九州から関西にまたがる7事業所に対して行われた。それによると利用者の反応はおおむね好意的であり、今後の雇用に対しては外国人訪問介護者を前向きに雇用して行くと言うものであった。課題としては、「yes,noをはっきり言わない高齢者の心情を汲み取り、共感する技術を身につけること」とされた。今後の展望としては、「経済的自立を迫られている者が多い在日外国人女性を訪問介護者として安定的に雇用するには、訪問介護職の収入の安定と賃金の上昇、外国人を住民として包摂する地域の支援が不可欠」である、とまとめられた。
 さらに、今回報告の直前に2011年におこなった7訪問介護事業所への電話による現状確認に対する報告も行われた。2年後の現在、外国人訪問介護者の雇用は1事業所が継続しているだけであり、他は撤退していた。しかし今後は介護者だけでなく介護をうける外国人利用者の増加も考えられ、外国人訪問介護員の雇用を前向きに考えている。

 質疑応答により次の事が明らかになった。
 フィリピン人介護者には3つのパターンがある。1つはEPA(経済連携協定)によって来日して3年間で介護福祉士の資格をとり、日本の介護施設で働く人達。研修中は無資格であるが賃金は日本人と同等又は優遇されている。今後2014年にはベトナムから来日し、またタイからの受け入れも大筋合意に達している。2つ目は在日フィリピン人で、エンターテイナーとして来日し日本人と結婚して、定住・永住資格を持ち、ヘルパー2級の資格を持つ人達。賃金は日本人の有資格者と同等である。3つ目は新日系人で、2009年改正国籍法施行により国際婚外子の生後認定による日本国籍を取得した人達。子供に同行して親も来日する。来日にあたっては日本とフィリピンの間に日本の人材派遣会社が介在して、直接フィリピンで介護者育成を行い、日本の介護事業所に斡旋をしている。人材派遣会社は、来日した新日系人に対して仕事上の相談だけではなく、こどもの教育問題や地域での生活問題、行政の手続き関係など細かな支援をしている。新日系人は他の施設や給料のいい仕事に転職したくても、子どもの教育や人材派遣会社から受けるサポートのことがあり、簡単に動けない状況にあることが報告された。日本語能力のレベルが他の2者に比して低く、賃金も安めに設定されている場合が多い。
 今後、新日系人に対する調査が待たれる。        文責・岩山春夫

参考文献
・中井久子2010「在日フィリピン人介護士の介護現場における課題」大阪人間科学大学紀要「Human Science」第9号別冊
・中井久子2011「フィリピン人介護福祉士候補者と受け入れ施設の意識から見たEPA制度の課題」大阪人間科学大学紀要「Human Science」第10号別冊
・中井久子2013「外国人介護者による在宅要介護高齢者の支援に関する研究」大阪人間科学大学紀要「Human Science」第12号別冊
・在日フィリピン人介護者研究会2010「2008在日フィリピン人介護者調査報告書」在日フィリピン人介護研究会
・後藤由美子、カルロス、マリア・レナルース、中井久子2012「定住フィリピン人介護士の現状と課題」報告書
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こりあんコミュニティ研究会は、こりあんコミュニティにおける生活と文化への理解を高めつつ、当該地域コミュニティの再生のあり方について議論しながら、日本国内に限らず共同調査及び研究を行っていくグループです。
問合せ先:kocoken2009@gmail.com

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